うつへの理解

 

 創業15年、社員数20名のホームページ制作B社。事務方のトップを務めるC夫(45歳)が、社長へ「抑うつ状態」のため、勤務体制への配慮を携帯メールで要求してきました。社長から連絡を受けた私は、早速、診断書を持参させ、C夫、社長との3者面談をしました。

 

 

 状況を聞くと、仕事に集中できない、ミスを繰り返す、人と話したくない、休みの日はほとんどソファーで寝ているとのことです。以前にも今回と同じような症状になっていたことがたびたびあったようです。診断書には、「治療薬の副作用による勤務への影響があるため定時退社が望ましい」とありました。

 

 本人は、⑴定時退社、⑵1週間程度の休暇、⑶会社支給の携帯電話の勤務時間外の返還、を希望しました。C夫は生真面目な性格で、仕事を一人で抱え込むタイプのため残業や休日出勤が多く、家庭内でも親の介護をするなど、精神的に追い込まれていました。

 

 

社長は、創業以来ともに歩んできたC夫の会社への貢献は評価するものの、C夫の症状に対する理解が足りません。⑴の定時退社は、残業ゼロ運動を開始したばかりで、本人も帰りやすくなっており特別な対応は不要、⑵の長期休暇は、1人にとらせればみんなが要求してくるから難しい、⑶の会社支給の携帯電話は、勤務時間以外はメールや電話に対応しなくてよいと指示しているから問題ない、といった状態です。

 

社長は、20代で起業し、数々の苦難を乗り越え今日に至った苦労人です。「抑うつ状態」は、精神的な弱さからくるもので、放っておいても治る一時的な症状としかとらえていません。しかし、「抑うつ状態」のうちに対策をとり、「うつ病」に陥らないよう気を配ることがとても大切です。本格的に「うつ病」になると、意欲を出す、幸福を感じるなどの脳の神経伝達物質のやり取りに支障が出るようになります。こうなると回復には時間がかかります。

 

 

このまま放置し、「うつ病」になると、寝たきりになるなど働くどころか日常生活もまともに送れなくなるでしょう。本人や家族の生活が一変してしまうだけでなく、会社としても、他社員への仕事の負担が増し、安全配慮義務の違反ありとして責任を問われる事態にもなりかねません。

 

 

毎月1回の3者面談を始めましたが、社長が「うつ病」に対し理解できるよう時間をかけて説得を続けています。

 

 

 

       『第一法規「Case&Advice労働・社会保険Navi」h29.1月号』筆者コラムを転用』