問題社員社員対応の行方

 

 

社長が変わることで労使トラブルを防ぐことができます。

 

ある日、介護事業B社(社員15名)の社長から次のような相談がありました。

 3週間前に新店舗のオープニングスタッフとしてパート社員を3名採用した。そのうち

 のC子(59歳)が、他のスタッフにいろいろと会社の対応上の欠点を吹聴し手を焼いて

 いる。場合によっては辞めさせたい」。

 

オープン間もないB社では、通所者も少なく手持ち無沙汰な時間が多い状況でした。暇を持て余したC子は周りのスタッフに、「私の息子は弁護士だ。暇な時間が多いことでその時間分の未払いが起きる可能性がある。給与の未払いや支払いが遅れるなどの問題が起これば、私に相談しなさい」と触れ回っていました。さらに、「そういえば採用面接のときも20分も待たせるなどとんでもない対応だった」など、まだ給与支払日も来ていないのに、会社を責めスタッフを煽っていたのです。 

 

一方、B社はタイムカードを導入しており時間管理はきちんとしています。給与の未払いどころか、社長はスタッフの生活を守りたい強い気持ちがありました。仕事がなくても最低週3日は出勤させ、一定の給与を支払おうとしていたのです。 

 

私が聞き取ったところ、他のスタッフは、C子の会社への批判と息子の自慢話に付き合わされることにうんざりしていた様子でした。 

 

社長は今までに何度も労使問題で激怒し、感情的なもつれが問題を大きくしていました。その都度私は、「問題社員でも簡単には解雇できない」「交渉事はキレたら負け、冷静に話し合う姿勢が大切」と伝えてきました。

 

社長と共にC子に聞き取りを行いました。社長より、根も葉もない話で同僚を巻き込み会社を攻撃することや日頃の職務態度を注意したところ、反論するどころか何も意見が出ません。社長から事前に聞いていたC子の言動から構えていただけに、拍子抜けしました。 

 

しかしそれは、社長の対応がこれまでと大きく違っていたからでしょう。言葉を選び、冷静に優しく語りかけ、感情的にならないように接していました。おそらくC子は、周りに構ってほしく吹聴していたのでしょう。

 

社長が変わったことにより、これからは大きな労使問題は発生しないであろうとホッと胸をなでおろしました。労使トラブルの一番の回避策は、社長自身が社員に接し方・考え方を変えることだと強く感じた出来事でした。

 

    『第一法規「Case&Advice労働・社会保険Navi」h30.5.10号』筆者コラムより引用