「性格適性検査」を活用することで会社を変える!

 

卸売業A社長(創業15年社員15名「男性12名、女性3名」)から「中途社員がどうもうまくいかない。採用に問題があるようなので、性格適性検査を活用したい」との相談がありました。

 

 

 まず既存社員に適性検査を実施し、現社員の傾向値を把握することにしました。

 

 検査結果では次の傾向が表れました。

 

 

    ストレス耐性が、精神面・肉体面の双方で他社平均値を大きく下回っている。特に精神面が弱い。

 

    活動意欲が他社平均値を大きく下回っている。向上欲求、承認欲求が目立って低い。

 

    「リーダーシップを必要とする仕事」に適性がある人物が見当たらない。

 

 

 普段の様子を見ると、ミーティング中に発言がない、積極的に行動しなくてはならない状況でも率先して動かない、など「指示待ち集団」であることがわかります。なによりも問題なのは、会社を背負って立つはずの取締役や部長クラスが、A社の平均値を下回っていたことです。

 

 

  なお、注意すべきは全員の検査結果をそろえることです。何度も検査を受けるように促しても避ける社員がいます。問題ある社員ほど本性を見抜かれたくないと思うのです。「顧客より急な呼び出しがあった」とか「打ち合わせが長引いた」などと言い訳し検査を回避します。そこで社長と相談し、賞与支給のタイミングに合わせて適性検査を実施しました。検査を避けていた社員は、自分の利益を最優先し他人を振り回す傾向があることなどが明らかとなり、人材管理に活用しています。

 

 

    その後、会社の歴史や将来の経営ビジョンについて社長面談を行いました。対話が苦手な社長でしたが、10年以内に社員100名・年商100憶とすることなど大きな夢を語りはじめました。経営ビジョン達成に向けて足りないものが、①能力、②環境、➂行動、のどれに当てはまるか社歴を踏まえて聞き出しました。すると徐々に社長の口から、社員の積極性やリーダーシップが足りない、顧客トラブルなどが一旦起こると精神的に追い詰められてしまう、新規事業を提案しても誰もやりたがらない、などと消極的な社員の姿が明らかになりました。

 

 

採用の問題点を探るために、社長の実施する採用面接に立ち会いました。A社の経営ビジョン達成に向けて不可欠な人材(=リーダシップやチャレンジ精神のある人材)が育たないはずです。応募者との面談には時間をかけずにイエスマンタイプの人材ばかりに内定を出します。たまに気骨のある人物を採用してもすぐに辞めていました。社長が部下からの提言を受け入れたり、部下に仕事を任せきれないことも問題です。これでは、自分の考え・意見を言える人材は去っても仕方ないでしょう。

 

 

   その後、検査結果を項目別(性格、意欲、思考力、ストレス耐性、職務適正など)に一覧表とし、全従業員の傾向値や社長の経営ビジョン達成に足りない人材像を整理し改善案を協議しました。当初、事実に目を背けていた社長でしたが、客観的なデータで見せられると認めざるを得ません。最低限満たしてほしい人材像を整理し、社長の思いの詰まった経営ビジョンを求人欄に反映させました。

 

 

    社員100名・売上100憶円企業の達成に向けての事業計画(新規事業やM&A)

 

    必要とする人材像の具体的な特性

 

    他社に先駆けて取り組んでいる人事制度(定年制の廃止や再入社制度)

 

など具体的な募集内容を掲載しました。

 

 

 給与などの金銭条件面や福利厚生面では大手には及ばず、今まで通り面接過程で辞退されることが続きました。また、ターゲットを絞ったため、応募総数そのものも減少しました。ところが変化が表れました。A社のビジョンに賛同し、ひとり、ふたりと希望した人材が入社しはじめたのです。 

 

 

    やっとの思いで採用した人材ですので退職させるわけにはいきません。社長が社員に向き合い、新人が環境に溶け込めるように「定例ランチ会」をスタートさせるなど環境を整えました。社長と社員が展望を共有するための意識改革は続きます。