「コロナ禍での管理職の苦悩」

 新型コロナウィルス感染症の拡大防止策であるテレワーク(在宅勤務など)の導入が広まる中、管理職の多くは悩みを抱えています。部下と直接会う機会を失い、部下の心の状態や業務の進捗状況の把握、優秀な部下への業務集中を避けるための配分などです。

 

 各機関で公表しているテレワーク・アンケートの結果を見ると、管理職と一般職とで立場の違いによる興味深いデータが示されています。

 

 管理職では、1「通勤時間が無くなり読書などスキルアップの時間が増えた」、2「コミュニケーションが足りずに孤独を感じる」、3位「仕事に対し緊張感が保てない」の順となります。

 

 一般職では、1位「上司や取引先などとの人間関係のストレスから解放され気楽である」、2位「仕事に対し緊張感が保てない」、3位「通勤時間が無くなり資格取得などスキルアップの時間が増えた」などとなっています。

 

 また、他のアンケート結果も含め分析すると、多くの職場では、テレワークにより対面で接する機会が減り、上司は孤独で寂しさを感じ、部下は上司へのストレスが減り気楽さを感じています。上司は部下の業務進捗の状況を把握しづらく、部下は上司や先輩社員からの適切なアドバイスを受けられずに困惑しています。

 

 一方で、両者ともに監視されないことで、緊張感が保てずに仕事が捗らないことも懸念されます。また、部下は上司からサボっていると疑われているかもしれないと案じ、残業も申告できないことも問題です。

 

 中小企業の情報通信会社に勤務するA課長は、課員の精神状態や業務の進捗の把握に悩んでいます。特に、緊急事態宣言の発令が、人事異動や新入の入社時期と重なり、10名の課員の半数が入れ替ったことが影響しています。

 

 既に信頼関係が構築されている場合や共有する情報が多い場合には、オンラインでも互いに行間を読み想像しながら進めることができます。ところが、他部門からの異動組や新入社員を交えてのオンライン業務では、コミュニケーションがスムーズに取れずに課員の足並みが揃いません。

 

 テレワークのオンライン会議では各課員の顔がPC画面に表示され、発言者は大画面になると存在感を増します。資格の学校に通うために定時退社を貫いていた一般社員Cは、会議での発言も積極的で仕事も卒なくこなすことで高い評価を受けています。一方で、その場で適切な発言ができない社員は、存在が薄れていきます。

 

 ところが、コロナ感染者数が低下した秋口、賞与の評価面談のために直接会うと、オンラインで受けた印象と、直に会う印象とは大きく異なっていました。オンラインでは存在が薄く、低評価していた部下も表現が不得意なだけで、深い思考力を持つことが分かるなど大きな収穫がありました。直の対話は情報量も多く、最も効率的だと感じています。

 

 

 テレワークの定着は、課内での貢献の仕方にも変化が表れています。直に参加する会議では積極的な発言がなくても、うなずくだけで賛意を示し、会議をスムーズに進行させる役割で評価できました。また、休憩所等で他部署の社員と一服しながら雑談を交わし、自社・他社を含めたの営業や人事の情報を仕入れて伝達してくれることも意義のある行動でした。

 

 しかし、テレワークにより仕事の価値と各課員の力量が明らかとなる中では、上司が各課員の存在意義を見い出すことが必要です。特に、テレワーク下では出社時に、上司は意識して部下と対話を行うことが重要です。一言声をかけることで、相手の表情や些細な会話から困りごとを読み取ります。適切なアドバイスを行いながら、各課員が孤立しないようにその存在を認め、業務を配分するなど、地道なチーム作りが不可欠でしょう。