「能力不足でも所長を慕う所員への対応」

法律関連A事務所(所員15名・創業10年)での出来事です。

 

ある日、所長から問題所員対応について相談がありました。

「2年前に採用した実務経験のない有資格者B男(34歳)だが、書類上の間違いが多く取引先からのクレームが出ている。教育するにはどうしたらよいものか」との話でした。

 

後日、B男の勤務状況を他の所員から聞き取りました。⑴書類を書かせると誤字・脱字が多い、⑵上司や同僚への報告・連絡・相談(報・連・相)がなく所内連携がとれない、⑶事前の段取りが悪く、クライアントへの訪問時に必要最低限の資料が揃っていない、など能力不足・注意力不足が次から次へと明らかになりました。

 

所長と相談の結果、B男に対し改善計画を立てることにしました。「改善指示書」に署名させた後、所長自ら再教育を試みました。週毎に到達度をチェックし、次週の目標を設定しながら、面談と書面を通じて指導教育を繰り返し行いました。

 

しかし、B男は計画書に沿って素直に実践しますが、改善の兆しは見られませんでした。B男は、「所長について行きたい。職場が大好きです。頑張りますからチャンスをください。」と面談の度に訴えており、その真剣な眼差しは、その場を取り繕って主張しているとは到底思えませんでした。 

 

所長と総務責任者である所長夫人との話し合いをすると、所長夫人は素直で慕ってくれるB男を我が子のようにかばい、B男をあきらめかけた所長とは意見が合いませんでした。

 

  近年、権利の主張が強い従業員が多い中で、「事務所が大好き、オーナー所長の下で一生働きたい」と素直に語れる従業員がどこにいるでしょう。教育次第では、A事務所にとって大きな財産となります。B男と経営者とがとことん向き合いB男が成長することは、他の所員にも良い影響を与えます。時間はかかりますが、能力不足でも所員を育て大切にする事務所であることのアピールにもなるのです。

 

  議論の末、次のような方針で、再教育することになりました。

⑴月次での所長とのマンツーマン教育で緊張のあまりB男の努力が空回りしてしまうため、教育担当は、

 B男も接しやすい所長夫人とする。

⑵隔月の面談では、実務の専門家を同席させB男に適宜アドバイスをし、四半期に一度は所長が面談を

 行い、進捗状況を直接確認する。

 

 「足りない人材は他社から連れてくればいい」と人材紹介会社を安易に利用する経営者も少なくありません。しかし、採用難が続く中、会社側の希望にピッタリ合致した応募者にはなかなか出会えません。少々難はあっても、ご縁があって採用した人材に対し、諦めずに根気強く育てる工夫を行い、結果が出るまで伴走する姿勢を見せることで、労使間の絆を深め労働意欲を高めることも大切でしょう。

 

 B男が成長し、他の所員のお手本となる日が来ることを願っています。