「性格適性検査」を将来にわたって生かすには

「性格適性検査」は、便利なツールで次のような効果が期待できます。不適性人材の見極めに役立つこと、性格の問題を採用前に検知し入社後のトラブルを回避できること、当社に相応しい人物であるか判断ツールとして定着率(離職率)の改善につながること、適材適所で人材を生かす所属配置の参考となること――。

 

様々に活用できるにもかかわらず、採用時に限った利用で終わってしまうことも多く、勿体ないと感じています。

 

 では、なぜ中小企業では適性検査の結果を継続活用しないのでしょうか。次の理由が考えられます。

 

➀目利きを過信していること

…長年の経営実績から第六感による人物の目利きを過信し、データを軽視してしまう。

②採用や教育にコストをかけたくない

…設備投資や接待交際費であれば惜しみなく資金をつぎ込むが、採用や教育にはコストをかけたくないと考えている。継続して適性検査を実施し適材適所の人員配置を行うことで離職を防ぎ、コストカットにつながることが理解できない。

③適性検査のデータが共有されていない

…役立つツールであることが一部の社員にしか理解されず、入社時だけの活用となる。関係者間でデータが共有されず、長期視点の人材育成に生かされていない。

 

 継続を促すためには、社長や幹部社員に具体的データ――例えば、他社での実施前後の離職率の推移、平均勤続年数、費用対効果など――を示し、活用次第で効果が現れることを可視化し納得してもらうことが必要です。

 

 サービス業A社でも、適性検査を採用時に使うだけでした。採用難の昨今、新人は会社で発言力のある所属長の部署へ優先的に配属されており、配属先社員の性格傾向は考慮されていませんでした。1年以内の離職率は5割を超え、時間をかけて採用し指導しても辞められることが続いていました。この問題を解決するため、社員の性格傾向を知る必要があると考え、採用時の検査結果を既存社員を含め、部署毎に一覧表にし分析しました。

 

ある日、B課長が新人C男の配置を強く要望しました。B課は、自己の成長を最優先とし単独行動を好む社員が集まっています。業界経験がない新人を配置しても、指導がおざなりとなってしまうことが見込まれました。そこで、性格傾向が似通った社員が在籍し、かつ面倒見の良い社員がいるD課に配属することで、C男は活躍することができました。

 

人事異動の際には、上長から見た職場での働きぶりと適性検査のデータの双方を基に、能力を十分に発揮できる人員配置となるように気を配っています。特に、社会人になって間もない若手社員の中には、精神面での脆さが見られる場合もあり、十分な配慮が欠かせません。これらの対応の結果、離職率は従来の半分以下にまで改善しています。

 

注意点としては、検査の結果を鵜呑みにせず、一般的な傾向に過ぎないことを理解し、同僚や上長の印象も合わせて判断することです。また、社員11人の成長と共に性格適正も変化するので数年単位で再検査を実施しデータ更新することも欠かせません。コスト面では、性格適正検査のみであれば11,0005,000円程度。解雇が自由にできない労働法が立ちはだかる中での採用や異動のリスク軽減を鑑みれば、費用対効果は高いと言えます。

 

 このように性格適正検査は、採用時の一時利用に留まらず既存社員にも大いに活用できます。従来の勤務成績にデータ化した検査結果も加え、人材育成プランを作成されることをお勧めします。

 

第一法規『CaseAdvice労働保険Navi 202210月号』拙著コラムより転載