「リモートワークとメンタルヘルスの現状➀」

 コロナの市中感染が拡大して来春には3年が経過しようとしています。多くの企業が感染拡大防止に向けてテレワークへと切り替え、労働環境も大きく変化しました。

 

 東京都が1011日に発表した都内30人以上の企業への調査では、テレワークの実施率は、今年9月(51.9%)となり、昨年8月(65.0%)のピーク時より13.1ポイント減少しています。同様に、週3日以上テレワークを実施する企業数も今年9月(48.4%)は昨年8月(51.6%)に比べ3.2ポイントマイナスと減少傾向にあります。緊急事態宣言や蔓延防止措置が解除され出社を再開する動きも見られますが、一度普及したテレワークは今後も継続される見通しです。

 

 テレワークの中でも、特に在宅勤務を行う社員については目配りが必要です。職場と生活の場が同一となったため、気持ちの切り替えができずに、メンタル不調に陥る社員が現れているためです。

 

システムエンジニアA男(30歳)のケースでは、コロナ前から職種特有の長時間労働が続き、時には終電まで仕事をすることもありました。当時は、帰宅後、晩酌しながらの読書や映画鑑賞などで気持ちが切り替えられました。また、通勤時間中はゲームに没頭したり、通勤帰りの同僚との会食したりすることも気分転換となっていました。

 

ところが、在宅勤務になると、いつまでも仕事に追われ、熟睡できなくなりました。毎週末に通っていた映画館でも最後まで鑑賞する気力がわかずに中途退席してしまうことも続きました。このような日々を過ごすうち、次第に集中力や気力も続かなくなってきました。頭痛や吐き気にも襲われるためメンタルクリニックを受診すると、「うつ」と診断され、静養することを勧められました。会社へは休職願いを提出、実家に戻り静養中です。

 

A男のようにワンルームで一人暮らしの社員は、同僚や知人と会うことや、連休中の帰省も控える状況が続きストレスを蓄積させています。いつも仕事に追われていると感じてイライラする、仕事のことが頭から離れず夜になって寝つきが悪い、朝起きても疲れが取れない、肩こりや頭痛など体調不良が続き業務効率が上がらない、などの症状を訴えています。交感神経が常に「過緊張状態」に置かれることによる症状です。

 

過緊張状態を解消することが、健康に仕事を続けるために大切であることがわかります。どのように対処すればよいのでしょうか。産業医によると、ONとOFFを切り替え、生活にメリハリをつけることです。具体的には、次を推奨しています。

 

➀仕事から切り離す…時間を決めてパソコンのログオフを行う

②体を動かす…出来るだけ外出しジョギング・ウォーキングなど有酸素運動を行う

③脳をリラックスさせる…寝る前にスマホを切りゲームやSNSから離れる

④規則正しい生活…最低7時間は睡眠をとり従来の出社時刻に起床する

⑤時間外労働を避ける…メールや電話や資料の閲覧は、勤務時間外に行わない

 

 年末を迎え第8波の感染拡大が懸念される中、長引くパンデミックの影響は様々な形で現れています。企業は社員からの相談窓口が機能しているかどうか確認が必要です。窓口担当者は、在宅勤務時に「過緊張状態」とならない過ごし方など他社事例を踏まえて収集し、広く社員に周知することが大切です。

 

  

 第一法規『CaseAdvice労働保険Navi 202211月号』拙著コラムより転載