『働かないおじさん問題』

今回は、コロナ以降特に目立ってしまった「働かないおじさん」について考察します。

 

40代半ばから50代にかけてのミドルシニア層がすべて働かないおじさんに当てはまるわけではありません。

 

実際は20%ほどと推定されます。体力的にもパフォーマンスの下がったこの世代は、年功給により所得が高いため、若手・中堅世代の不満のはけ口にされがちです。

 

50代前半の事務職員Aの事例です。Aは転職組で勤続10年となりますが、業界のデジタル化に対応できず、例えばZoomミーティングにもスムーズに参加できませんでした。

 

結果的に「働かないおじさん」として社内で孤立していたため、会社から面談を依頼されました。当初は本音を引き出せませんでしたが、徐々に状況が明らかになりました。

 

問題点は次の通りです。➀成果が出せない、②仕事へ取組む意欲が下がっている、③段取り力に欠ける、④成功体験にしがみつき他人の話を聞かない、⑤自身を変化させることに後ろ向きである―。

 

そこで、社長と相談しAを「働くおじさん」へとシフトするプロジェクトを立ち上げました。成果を出すには、A・上司・会社(人事)が歩調を合わせることがポイントとなります。三者三様に、自分に非はなく相手の責任範疇であると考えている点が問題です。

 

Aは「会社や周りが自分を理解してくれない、今更頑張る気になれない」と感じ、上司は「本人にやる気がない、助言したところでムダ」と考え、人事は「上司が管理すべき、口を挟むと越権行為となり面倒なことになる」とお互いに関わりを避けていたのです。

 

 働かないおじさんの業務は、比較的ルーチンワークが多い傾向にあります。本人も「成長が感じられない」ことには気付いており、このままではまずいと自覚しています。本来は本人が自主的に気付いて行動することでしょうが、会社側が意図的に変化を与えて、変化への抵抗感を除いてあげることも重要です。

 

 そこで上司・社長とAについて、➀成果を出してもらう、②人事評価の期待値を下げる、③別の道を探る、のどれを選択するか協議しました。Aのケースでは③を主体に教育することにしました。

 

 Aのこれまで積み上げてきたキャリアを生かし、社内貢献は可能と判断しました。例えば、得意分野において新人はじめ若手の相談役となり、悩みやお困りごとの解消に尽力してもらうなど、社内キャリアコンサルティングとしての居場所を確立できそうです。

 

 かつては、Aも先輩からマンツーマンで指導を受けており、恩返しをしたい、誰かの役に立ちたいという強い気持ちがありました。きっかけさえ掴めれば、変化・変容を遂げることは可能でしょう。そこで、相談窓口として機能できるように外部機関も併用して教育を始めました。成果が現れるのはまだ先ですが、Aが恐れずに変わってくれることを願っています。

 

第一法規『CaseAdvice労働保険Navi 20236月号』拙著コラムより転載