【適正検査活用時の注意点】

【背景】

生成AIツールの充実や就職支援会社の手厚い援助により、就職希望者の履歴書はどれも似たり寄ったりとなり、面接時の回答はマニュアル化され、適性の見極めは難しくなっています。蓄積されたデータにより選別できる「性格適正検査」の利用価値はますます高まっていると考えます。

 

【相談】

人事担当者から社長プレゼンに加勢してほしいと依頼がありました。採用、研修、配属、および育成の各場面で重宝するため、性格適正検査を導入してほしい、と常々訴えてきました。しかし、経営陣の許可が出ません。そこで、導入の必要性をアピールすることにしました。

 

【メリット】

性格適性検査は、便利なツールで次のような効果が期待されています。不適性人材の見極めに役立つこと、性格特性を採用前に検知し入社後のトラブルを回避できること、自社に合う人物であるかどうか判断しやすく定着率を高められること、特性に合う適材適所の配置の参考となること等、様々に活用できます。

 

使用するツールによりますが、検査は、「気質」「性格」「態度」「役割・行動」を基に分析されます。気質と性格は、「三つ子の魂百までも」と言われる通り先天的な部分が多く、入社後の変化を望むことは困難です。これに対し、態度、役割・行動は、後天的要素が大きく成長や変化が期待でき、検査で重視すべき項目となります。会社の風土に馴染めるかどうかも見極められます。

 

【留意点】

検査を利用する際の留意点は大きく2つあると考えています。 

まず、得られる情報の受け止め方によるものです。人間関係や組織文化との相性の判定は困難で、結果を過信するとミスマッチに繋がります。検査結果から親和性の高さが見込めた場合でも、会社のカラーに合う人材だけを採用すると、イエスマン化・組織硬直化が起こることに気をつける必要があります。また、多様性の受入れが不可欠な現代で、様々な働き方、発達特性への理解、および個性尊重が求められていることにも注意が必要です。

 

会社が警戒するメンタルヘルス判定への誤解も然りで、病みそう・弱そう・扱いにくそう、と安易に判断し対応を誤ると、訴訟問題に発展することもあり得ます。ハラスメントや差別に繋がらないか、病気・障害に対する配慮を負担のない範囲で提供できないか、十分に検討する姿勢が求められています。

 

留意点の2つ目は、認知的歪みが入り込む場合です。性格の弱みに過剰にフォーカスし、強みを見落とし活躍できる仕事に気づけないことはままあります。さらに、やっかいなのは、上席の偏った見立てに他の社員が意見できなかった結果、ミスマッチを起こしたり、有能な人材が入社すると自身の立場が脅かされると危ぶみ、採用を見送ってしまったりすることもあることです。

 

課題

 

検査結果は、その人の弱点や課題を明らかにします。導入時は、既存社員の性格傾向を把握すべく全社員に受検してもらうこととなりますが、ここで中高年層を中心とした管理職層から反発を受けがちです。理由は、会社側に傾向を知られることでポジションや昇給に不利益を被るのではないか、と懸念するためのようです。

 

検査を導入する際は、一人格として認め合う組織風土、人目を気にせずに実力を発揮できる安心感のある職場環境であるかどうかが、最初に確認することかもしれません。そのような土壌がないとき、まず取り組むことは、自身の欠点をさらけ出しても安心で安全な環境作りとなります。その環境が成長を続ける強い組織をも形作ること、これを理解してもらうことが大切です。

 

第一法規『CaseAdvice労働保険Navi 20266月号』拙著コラムより転載