労働基準監督署等の調査

「何とかなるさ」などと安易に考えていませんか!?

労働基準監督署の調査は、ある日突然にやって来ます。

(1)従業員やその家族から労働基準監督署への通報

(2)労働基準監督署が労災事故が立て続けに起こったことにより労務管理が適正に行われていないと判断

(3)以前に労働基準監督署から是正勧告が行われ、その後適正に対応しているか確認のため、などが考えられます。

調査の重点項目

賃金台帳や出勤簿の改ざんをしようとする経営者さんも見受けられますが、労働基準監督署はすべてお見通しです。コンプライアンスが求められる中、不正発覚による「企業名の公表」による代償は大きくなります。

調査項目を理解したうえで、スムーズに調査を運ぶことで、リスク回避につながります。

労働基準監督署の調査対応

「労働基準監督署です。突然ですが、御社の調査を行いたいのでご協力いただけますか。」といって、ある日突然に、見知らぬ労働基準監督官(以下、「監督官」)がやってきます。

これが労働基準監督署(以下、「労基署」)の「臨検」や「監督」と呼ばれる立ち入り調査です。

労基署に何回も入られる方以外は、尋常じゃないと直感的に危機感を抱きます。おそらく、税務署の税務調査を初めて受けるような感じでしょう。

監督官は、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等に照らして、これらの法律を遵守しているかどうかを調査し、法違反があれば、「是正勧告書」を交付します。

また、法違反とまでいかなくても、法の趣旨から改善が望まれる点があれば、「指導標」を交付して、事業場に対して改善報告を求めてきます。

事業場に立ち入るときも、特に通知する必要は無く、また、犯罪調査が主体ではないことから、捜査令状の必要もありません。監督官には、特別司法警察職員としての権限が付与され、逮捕権まで持っているのです。

 

日本国憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定められています。監督官が特別な権限を付与され、事業場を監督する目的は、憲法25条の理念を実現するために制定された、労働基準法等に基づいて、労働者が、健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるかどうか、賃金、安全、健康などの面から確認するために実施しているということになります。

 

電通事件以降、過重労働による精神障害や、それに伴う自殺が増えており、労働者の健康について特に留意することが求められています。監督官による監督の本質は、【労働者の健康問題】にあるのです。

労働基準監督署の調査の種類

1.定期監督

一般的な調査で、労基署が任意に調査対象を選択し、労働法令全般が守られているかを確認する調査。

原則として予告はありません。(事前に連絡の上、調査の場合もあり。)

2.災害時監督

一定程度以上の労働災害が発生した際に、原因究明や再発防止の指導を行うために調査。

3.申告監督

労働者や家族からの申告(告訴や告発)があった場合に、その申告内容について確認するための調査。調査の入りには、次の2ケースがあります。

  1. 労働者を保護するために労働者からの申告であることを明らかにせず、定期監督のように行う場合
  2. 労働者からの申告であることを明かして呼出状を出して呼出す場合

再監督

監督の結果、是正勧告を受けた場合に、再度行う調査。

  1. その違反が是正されたかを確認するため
  2. 是正報告書を指定期日までに提出しなかった場合

調査対策を練る、または、是正勧告に対する回答書を提出するには事前の周到な準備が必要です。